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「ESG」の「S」は社会(Social) - その範囲や具体例を解説

公開日:2023/02/12

はじめに

ESGの環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3要素の中で、社会(Social)に焦点をあてて、社会(Social)の基本的な概念と、その重要度について整理、解説します。

ESGとは

「ESG」とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取った造語です。「ESG」は2006年に国連が発表した責任投資原則(以下、PRI)で提唱されました。そして、原則に賛同する投資家、企業などが増え、その重要性が広く認識されるようになった投資判断の原則となります。

投資家側からは「ESG投資」という形で使われ、一方で、企業側では、ESGを意識した経営として、「ESG経営」という言葉で使われています。

「ESG」の「S」は社会

ESGにおける「S」は社会(Social)の頭文字です。ここでいう「社会」とは、社会全体で解決すべき課題を指します。自社の利益追求だけでなく、現代の社会的課題にいかに向き合い、解決していく姿勢を持つかが取り組みのポイントとなります。

なお、PRIでは、「無数にあり、絶えず変わっていく」との前提のもと、社会(Social)の例として以下のようなものを挙げています。

  • 人権
  • 現代奴隷制
  • 児童労働
  • 労働条件
  • 従業員関係

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「社会」に対する取り組みとは?

企業がESGのS(社会)を取り入れた経営を行うとき、具体的にはどのような取り組みが挙げられるのでしょうか。

「S」が示す社会的課題の中には、「人権」「雇用者と労働者との関係」「製造物への責任」「人的多様性」「地域社会との関わり」などが含まれます。企業がこれらの課題と向き合うとしたら、以下のような例が挙げられるでしょう。

・サプライチェーンからの児童労働や強制労働の排除
日本国内では起こりにくい人権問題ですが、海外にサプライチェーンを持つ企業であれば、児童労働や強制労働などの人権問題に注意する必要があります。
製品の原材料の生産過程にこのような問題があったとすれば、不買運動に発展するなどもリスクもあります。

・従業員のワークライフバランスの確保
どんな会社でも取り組めることとして、自社の職務に従事する労働者の安全衛生とワークライフバランスを確保を確保し、健全な労使関係を構築・維持することが挙げられます。

・多様性を重んじた人事制度の設計
特に日本企業が遅れがちであると認識されているのが、ダイバーシティ、とりわけジェンダー平等の観点です。女性の管理職登用や、育児中の男女に対する配慮を念頭に置き、リモートワークやフレックス制、休暇制度などを整備する必要があります。また、性別以外にも国籍や年齢、障害の有無など配慮すべき多様性には多くの観点が含まれます。

「社会」の重要度は? なぜ重要度なのか?

・コロナ禍によって重要度が高まった
ここ数年のコロナ禍の影響や種々の人権運動の高まりによって、人類社会の価値観は大きな転換を迎えました。企業の「社会」への取り組み方も、今後注目度はますます高まっていくでしょう。
また、ある程度の水準は「達成できて当たり前」となることも予想可能であり、企業の取り組みとして重要度は高いと言えます。

・人材採用の弾力性に関わる
多様性を重んじ、柔軟で効果的な人材活用が可能な仕組みを整備することは、社会にとってだけでなく、企業自身にとっても有益です。特に人口減少が進む日本国内では、多様な人材を迎え入れることが企業の競争力強化にもつながると思われます。

「社会」への取り組みが不十分なことによるリスクは?

「社会」(Social)への取り組みが不十分なことで、経営にどのようなリスクやデメリットがあるのでしょうか。

・製品やサービスの競争力が低下する
製品の生産過程やサービスを提供する従業員の環境に人権侵害や過労などの問題があることが判明すると、たとえ製品やサービスの質が高くても消費者はそれらを選ばなくなる危険があります。実際に、生産過程での問題が発覚して不買運動につながるケースも見られます。

・採用力や人材定着力が低下する
人材の多様性を重視する経営は、様々な人材を受け入れることで経営の柔軟性を高められますが、裏を返せば、人材の多様性に欠けた経営は人材活用の面において他に遅れを取る危険性が高いということでもあります。「社会」の軽視は、採用力や人材定着力の低下を招きかねないと言えるでしょう。

おわりに

「社会」(Social)への取り組みは、投資家や株主だけでなく、消費者や従業員に対する価値を示すために必要な取り組みです。近年の、様々な社会課題への関心の高まりに伴い、ESGの「S」の重要度もまた高まっています。

「社会」への取り組みというとCSRとしてボランティア的な取り組みをイメージすることもありますが、近年では企業の利益拡大と社会貢献はセットで考えられるべきものとして捉えた方がよさそうです。

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